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あいすまん

あいすまん

みやたびゅ弐


あいすまん宮城氏担当(以下あい) どうも。お久しぶりです。
宮城隆尋氏(以下宮城) いやはや。
あい 新たに詩集を発行したということで。急遽インタビューを組むことになりました。
宮城 いやはや。
あい まずは概要をお話いただけるとありがたい。
宮城 いやはや。四年間の集成ですな。「沖国大文学」(注①)と「キジムナー通信」(注②)に発表してきた詩を中心に未発表数篇含めて全29篇。ハードカバー上製本で帯までついて定価2,000円とお買い得。
あい なるほど。宣伝まではお願いしていません。
宮城 あ、そう。
あい 早速ですがタイトルの「idol」(注③)という言葉は、どのような意味合いで?
宮城 「偶像」です。
あい …いや、それはそうですけど、どのような思い入れがあってこのタイトルに?
宮城 読めっつの。何でもかんでも人に訊いてばっかりじゃいい仕事できないよおたく。
あい 私インタビュアーなんですけど。
宮城 ……
あい 説明が嫌なら聞きませんが。
宮城 いやはや。
あい …「健全」(注④)などは近頃流行りのDVが題材となっているように見受けられますが
宮城 まあその中でも女性に関して言いたいですね。詩の内容からはズレますけど。女性運動も定着した感がありますけど、彼女らの最大の敵は男性でなく女性自身だということを言いたい。自ら人権を放棄するような女性が多すぎる。女性が頭良くならないと世の中良くならんですよ。
あい 「志願制従軍慰安婦」(注⑤)に書いてありましたね。
宮城 男の行動原理は性欲ですからね。ナチュラルに行動して理性が先行するのは女性でしょう。そうじゃない人もいますけど。人間は獣性を徹底的に排除していかないといけないから、女性がある程度男の上にたつ世の中になれば、歴史も落ち着くんじゃないかな。面白味はなくなるかもしれないが。
あい じゃあ今後は女性運動などにも積極的に参画したり?
宮城 何で? そんなことしないんですけど。運動家じゃあるまいし。
あい ああ、そうなんだ。 …歴史といえば、「戦争の世紀」を終えた今後の社会をどう見ますか。「ネオ・ナショナリズム」(注④)には過激な言葉も飛び出してますが。
宮城 「テロだ!」「報復だ!」っていつまでも盛ってんじゃねえよって感じです。「悲劇の連鎖」って言われてるけど断ち切ろうとする声は一向に小さいままでしょう。いい加減集団ヒステリーはうんざりですよな。ジャイアニズム(注⑥)を地でいく国というのは傍から見ればギャグだけど、絶対関わりたくない存在。
あい はた迷惑な、と。
宮城 みんな死ねばいいんだ!みたいな。
あい そんな結論でいいんですか。
宮城 いやはや。
あい 関わりたくないとはいえ、もう深い関わりを持っちゃってるのが我が沖縄県ですよね。この島を題材としたものに「花は血を吸う」(注④)があると思うのですがどうですか?
宮城 これ、誤解を受けやすいというか、読んだ人みんなハイビスカスやデイゴのことだと思っちゃうみたいなんだよね。
あい え、違うんですか?
宮城 ほら見ろ。みんなこの花が赤いというイメージがないんだろうけど、沖縄ではこの花は赤いの。まあ、アカバナーでもブーゲンビリアでもいいんだけど。
あい …ああ。テーマを読めてれば。
宮城 あと誤解といえば「言語征服者」(注④)も、わたしとわたしの父親のことだと思っちゃう人が続出―、みたいな。
あい え、違うんですか?
宮城 ほら見ろ。……まあそういう読みでもいいんだけど、題は「言語征服者」なんだから、「言語征服者」とは何者なのかという点に注目していただきたいんだがね。
あい うーん…。
宮城 まあ、一度わたしの手を離れたんだから、どのように読まれようと文句は言いませんけどね。誤読を招くのならそれは書き方に再考の余地を残していたということでしょうからね。ぬばばばばー!
あい 納得いかなそうですね。
宮城 いやはや。
あい 最近は朗読などにも力を入れているようで。
宮城 はあ。うないフェスティバル2002(注⑦)で「文芸フォーラム・アコー」(注⑧)の朗読にまぜてもらいました。はじめは「うない」だけに文芸部の女性部員に誘いがあったんですけど、前日にわたしも読ませていただけることが決まって。
あい そこでは「座るな」(注④)を。
宮城 パレットくもじ(注⑨)前で道ゆく人々を怒鳴りつけてやりました。聞けオラ!みたいな。殺す!みたいな。
あい 殺しちゃいけませんよ(笑)
宮城 うるせえよ!お前も殺すぞ!
あい はいはい。
宮城 いやはや。
あい 大学の学祭でも朗読会をしたとかしないとか。
宮城 したっつの。まず「KILL THE GOD」(注⑩)で怒鳴りつけといて、中原中也の優しげな詩2篇(注⑪)で油断させ、そして「アトミックスーサイド」(注④)で恫喝し、最後に「座るな」で再び怒鳴りつける、と。
あい 客を何だと思ってるのか(笑)
宮城 いや、皆さん「素晴らしい」とお褒めの言葉をかけていただきます。
あい アンケートですか。
宮城 そうそう。中にはわからない奴もいて、「宮城さんの『KILL THE GOD』は声作りすぎ。割れてて何言ってるのかわからない」とか。俺がいつ声を作ったっていうんだ!耳クソ詰まりすぎなんじゃねえの?努力して聞け!みたいな。
あい それはちょっと尊大では?
宮城 うるせえ!誰が人外だ!
あい そんなこと言ってません。はい、では宮城さん以外の部員の方々はどうでしたか。
宮城 アオイ(注⑫)が特に見違えた。「こんな空は」で鳥肌が立ったね。キュウリユキコ(注⑬)も堅実にトップを務めてくれたし、松永朋哉(注⑭)は照明と音響の演出が凝っていた。トーマ・ヒロコ(注⑮)は意表をついて短編を読んだし、ともこ(注⑯)もいい声してた。裏方も頑張ったし。
あい ほう。構成詩(注⑰)など意欲的な企画もあったり。
宮城 聞いただけでもわかるように脚本を何度か作り直したんだけどね。やっぱり難解だったらしい。
あい 結論として、夢や希望とは一体どういうものと言っていたんですかね?
宮城 それを訊いてんじゃねえっつの!そこは聞いた側に考えてもらわないと元も子もないだろうがバカ!
あい ひどい。でも分かりにくいですよあれは。
宮城 もういいよ。どうせわたしのことなんか誰も理解しない。
あい ……話題を変えます。最近は音楽の話を聞きませんが、詩の題材として今も音楽にインスパイアされることはあるんですか?
宮城 とんとご無沙汰です。東京行った時(注⑱)に戸川純の新しいベスト盤(注⑲)とcali≠gariの「第7実験室」(注⑳)を買ったぐらい。その二つは毎日聞いてますが。めっきりアンテナ低くなっちゃって。
あい もうオヤジですね。
宮城 うるせえ!人が気にしてることをぬけぬけと。このボケが!
あい 今日は一言多いですよ。バカとかボケとか。
宮城 ……すいません。
あい まったく。では、同じ文芸部員で松永朋哉が『月夜の子守唄』(注21)を上梓し、伊波泰志(注22)も詩集発行をにらんで編集作業をしているわけですが、どうですか。
宮城 松永は「夢の記憶」に驚愕しました。わたしは勉強不足なので現代詩の水準とかには疎いですけど、もっと感傷を排していけば、詩壇と呼ばれている場所である程度勝負のできるエネルギーは持っていると思います。
あい 伊波泰志はどうですか?
宮城 言うに及びませんね。伊波の場合は評価されなければ周りがおかしいと思います。まあ少なくともわたしにはもう伊波を計れるものさしがないからそう言ってるんですけどね。
あい 全幅の信頼を寄せていると。
宮城 というかムカつきますね。「やられた」と思うことが多々。
あい なるほど。
宮城 まあマンガではともこに「やられた」と思うことが多いし、エッセイではトーマ・ヒロコに、ケモリンやキュウリユキコやタムケン(注23)には日々いろんな面でやられているし。
あい やられっ放しじゃないですか。
宮城 うるせえなこのバ…
あい バ… ?
宮城 馬鈴薯。
あい わたしは馬鈴薯じゃありませんが。
宮城 引っ張るな。このうんこ。
あい うんこもダメです。
宮城 うんこうんこうんこうんこ!
あい ああ…… はいはい。じゃあ何かほかに訴えたいことなどありましたら。
宮城 買ってね。そして読んでね。
あい あ、もう書店にも?
宮城 はい。委託販売で。中には露骨に嫌そうな顔する(注24)ところもありましたけど、殆どの店はわたしの詩集の価値がわかっていただけて、快く置いていただきました。
あい 価値うんぬんはともかく、置いてくれたと。どれくらいですか。
宮城 球陽堂が本店(那覇市安里)に10冊、BOOKSじのん(宜野湾市)10冊、田園書房宜野湾店10冊、朝野書房大学店(沖国大厚生会館1階)10冊、文教図書(那覇市・パレットくもじ7階)3冊、熔樹書林(宜野湾市長田)5冊。
あい 帯(注25)もついてますからね。平積みにしてくれると見栄えが違うでしょう。売れるといいですね。
宮城 売れるっつの。売り切れ必至!読者の皆さま書店に急いでさあ早く今スグに!
あい はいはい。新聞などにも載るんですかね。
宮城 そりゃもう。琉球新報にはもう載りました。「あしゃぎ」(注26)という人物紹介的なコーナーに。書かなくていいことまで書いてくれてましたけどね。まあ、ありがたいことに変わりはないんですけど。
あい 採用試験がうんぬん……
宮城 うるせえっつの!読んでんじゃんお前。本当に殺すぞ!
あい ほかにはまだ?
宮城 書評も載せてくれるはずです。お願いしてきたので。沖縄タイムスにも、人物紹介と書評が載ると思います。
あい 結構手厚い待遇では?
宮城 はあ。沖縄の新聞社も詩壇そのものも暖かいですよ。わたしは幸せ者です。
あい 詩壇といえば、現在県内の詩壇は高齢化(注27)が進んでますが、どうですか。
宮城 ああ。新人を掘り起こすシステムも組み入れていくシステムも存在しませんからね。
あい 新聞紙上の投稿欄(注28)とか。
宮城 同人誌(注29)などでも。他県は標準的に存在します(注30)。この違いは大きいと思うんですけどね。
あい どうすればいいでしょう。
宮城 「あいすまん」でやってることも実はそういうことを意識してるんですがね。
あい 「3分詩人クッキング」や「あいしだん」ですか。
宮城 そう。縦書きページではメインカルチャーである文学の、特に詩の若い世代を活性化していければいいなと。横書きページではサブカル方面でアプローチ。
あい じゃあもっと配布経路(注31)を拡大していかないといくらやっても機能しないのでは?
宮城 そこが問題なんですがね。レコード屋や沖国大、琉大などには配布してるんですが。道端でばら撒くわけにもいかないし。
あい 詩を書いている若い世代、或いは書きたいと思っている人たちがどこにいるのか、経営的に言えばマーケットがどこにあるのか、というのが。
宮城 狙い打たないと無駄に撒いちゃうからね。ホームページ(注32)を立ち上げるというのも、コストをかけずに不特定多数にアピールできる点で今検討中なんですが。
あい いいですね、それ。早くやりましょうよ。そっちの方が反響ありそうなんですけど。
宮城 まあね。諸事情あって遅れてます。
あい はあ。個人のホームページは持たないんですか?
宮城 未定です。
あい はあ。では、そろそろ切り上げようと思うのですが何か最後に一言あれば。
宮城 買って下さい。そして詩を書いて下さい。レッツ詩人。
あい ということで。


―終― (収録:2002年12月下旬)


【注釈】
①「沖国大文学」……沖縄国際大学文芸部が発行する文芸作品集。年二回刊。2000年11月創刊で2003年7月現在5号まで刊行中。
②「キジムナー通信」……詩と批評を中心に掲載する非同人制詩誌。主宰は宮城松隆(日本現代詩人会会員)。季刊。1999年5月創刊で2003年7月現在19号まで刊行中。
③「idol」……1.偶像。2.崇拝(敬愛)される人(もの)。『ライトハウス英和辞典』研究社
④「健全」「ネオ・ナショナリズム」ほか……詩。宮城隆尋作。『idol』所収。
⑤「志願制従軍慰安婦」……エッセイ。宮城隆尋作。脱稿後、発表媒体を決めかねてお蔵入りの危機だったが、結局「沖国大文学」5号に発表。
⑥ジャイアニズム……藤子F不二夫の「どらえもん」に出てくるガキ大将、ジャイアンの名台詞「お前の物は俺の物、俺の物も俺の物」に由来する暴力をタテにした自己中心主義。ガキ大将のジャイアンならともかく、大人でこんな非人道的な主義を公然と主張できる人がいたら迷惑この上ない。国家においても同様だ。
⑦うないフェスティバル2002……毎年開催される女性のためのイベント。ちなみに「うない」とは琉球方言で「女性」の意。
⑧文芸フォーラム・アコー……佐々木薫氏(詩人・第11回山之口貘賞受賞)・芝憲子氏(詩人・第3回山之口貘賞受賞)らを中心とした女性詩人のグループ。
⑨パレットくもじ……県都那覇市一の繁華街にある複合型ショッピングセンター。沖縄で最も人の集まるところ。
⑩詩。沖国大文芸部員のケモリン作。『沖国大文学』創刊号所収。
⑪中原中也の詩2篇……「サーカス」と「頑是ない歌」。寂しげでもある。
⑫アオイ……沖国大文芸部員。「花は血を吸う」(宮城隆尋作)と「こんな空は」(伊波泰志作)を読んだ。当日はアオイでなく本名で出演した。
⑬キュウリユキコ……沖国大文芸部OG。「目の前に猫」(宮城隆尋作)と自作詩「芋畑」「みずたまり」を朗読。
⑭松永朋哉……沖国大文芸部第三代長。「夢から醒めれば」(すやもと沐希作)「紳士の叔父様」(九条岬作)と自作詩「月夜の子守唄」「この島の赤」を朗読。
⑮トーマ・ヒロコ……沖国大文芸部員。短編「日曜日」(砂河千笑)を朗読。
⑯ともこ……沖国大文芸部員。「不在」(すやもと沐希作)と「サブカルチャーショックウェイブ」(伊波泰志作)を朗読。
⑰構成詩……戯曲調の長詩。タイトルは「夢と希望」。人類滅亡直前という絶望的な状況下において残りの生をどう考えるかという自己啓発セミナーの様な話。
⑱宮城隆尋は2002年9月初旬に卒論の資料集めのため1週間東京へ行った。
⑲戸川純……サブカル系昭和の歌姫。細野晴臣作曲の「玉姫様」などで有名。わたしが購入したベストはゲルニカやヤプーズ時代の曲がメイン。
⑳cali≠gari……ビジュアル系に分類されていたが今はジャンル分類不可。「第7実験室」はメジャーデビュー後2作目。ラジオに出演すると下ネタ炸裂で下劣なトークを展開するが、作品は嘘のように真摯。曲調はポップだが詞は痛め。
21『月夜の子守唄』……松永朋哉の処女詩集。全20篇。A5版50頁。¥1,000。
22伊波泰志……沖国大文芸部員。第二代部長を務めた。処女詩集『柱のない家』を2003年発行予定。
23タムケン……タムラケンジ。OKtechnopia主宰。ソラノヒビキの中心的メンバー。氏へのインタビューを掲載した『あいすまん』Re:2もヨロシク。
24嫌そうな顔する……委託の詩集は通常、殆ど売れないため。『idol』以外は。
25帯……販売促進のため推薦文やキャッチコピーなどを本に巻きつけたもの。
26「あしゃぎ」……県内紙「琉球新報」の人物紹介的コーナー。因みに『idol』の紹介は12月5日付け朝刊文化面。
27詩壇の高齢化……『沖縄文芸年鑑』(沖縄タイムス社)の「文芸関係者人名録」によると県内詩人70名のうち65歳以上は3割を超え、40歳以下は宮城隆尋1人。
28新聞の投稿欄……90年代初頭までは「琉球新報」紙上に「琉球詩壇」があり、毎月新人の詩を掲載していた。
29同人誌……県内には『KANA』『EKE』等多数あるが、投稿欄のあるものはない。
30他県には標準的にある……地元紙の投稿欄。宮城隆尋の調査によると6割強。
31配布経路……現在は沖国大、琉球大学、宜野湾市内のCD屋4店舗、喫茶店ほか。
32ホームページ……あいすまん公式サイト。今のところ2003年9月公開予定。


【プロフィール:宮城隆尋(みやぎ たかひろ)】
1980年那覇市生まれ。1997年ごろから詩を書き始める。 詩集に『自画像』(1997 非売品)、『盲目』(1998 私家版・1,000円 第22回山之口貘賞受賞)、『idol』(2002 狐松庵・2,000円)がある。沖縄国際大学国文学科卒。沖縄国際大学文芸部OB。沖国大文芸部の創立者。1999年5月に同好会として創立した同部の初代会長を務め、季刊の音楽誌(のちに総合誌へリニューアル)『Amp!』を創刊。同誌は第5号(2000年夏号)まで発行され、休刊。2000年6月に正式にサークルに昇格した際は初代部長に就任。年刊(当時)の文芸誌『沖国大文学』や月刊のフリーペーパー「偽パンダつうしん」を創刊。この2誌は現在も続刊中。現在は部長を引き継ぎ、後進の育成に尽力している傍ら、上記2誌のほか『キジムナー通信』などを拠点に詩作を続けている。


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